今の生活が10年後の肌を作るという言葉があります。
現在の生活で、肌や体を酸化させるものを摂取し続けていると、 10年後には「肌の老化」が進行してしまうのです。
近年、美容の情報が詳しく紹介されるにつれて、 酸化物質という言葉とともにフリーラジカルという言葉も登場しました。
どちらも体の老化を速めて、 悪性腫瘍を作り出す原因になるともいわれている問題のある物質なのですが、 一般の人の間ではまだそれほど認知されていないのが現状です。
今回は、フランス最大の政府基礎研究機関である フランス国立科学研究センター(CNRS)のシルヴィア・ピエトリ氏によってまとめられた 「フリーラジカル」についての情報を紹介します。
フリーラジカルとは
フリーラジカルは今日、皮膚の組織の老化を引き起こす原因の一つとして認識されています。
皮膚の組織の老化は、美容の観点から言うと、 特にシワのという形で顕著に表れます。
現在一般に市販されている美容クリームのうち、 シワをはじめとする肌と老化に効果があるとされるものの中には、 抗酸化作用のあるものや、抗フリーラジカルの効果を持つ成分が含まれているものがあります。
フリーラジカルというのは科学の世界の言葉です。
通常、原子、あるいは分子は安定した状態でいるために適切な数の電子を帯びています。
しかし、電子が多かったり少なかったりする=不安定な状態の原子や分子も存在し、 それらをフリーラジカルと呼ぶのです。
フリーラジカルが起こる原因
生物学的な例を挙げると、酸素(O2)は、 細胞内に取り込まれたとき超酸化物(O2-)になるため電子を一つ獲得します。
こうした奇数の電子は分子を不安定にさせます。
電子の数が余分、あるいは不足している不安定な分子は、 自らを安定させるために 周囲にある分子から電子を奪うか与えることによって安定な状態になろうとします。
この不安定な分子、つまりフリーラジカルが生体内で生成されると、 電子の争奪が連鎖的に起こり、 結果的に「酸化ストレス」となって人体に大きな影響を及ぼすのです。
酸化ストレスとは
しかし、どこか一つのバランスが崩れた場合、 仮にそれが体の酸化還元のバランスだとすると、 私たちの体は余分に酸化され続けてしまいます。
酸素というのは人間が生きていくうえでなくてはならないものなのですが、 同時に細胞にダメージを与え続けるものでもあるのです。
したがって、体内で余分に酸化が起き続けていると「 タンパク質」「脂質」さらには「遺伝物質」などがダメージを受け、 体内の様々な器官に障害が発生するのです。
結果的に、これらの障害は「白内障」「関節炎」「心臓病」や「ガン」などの、 ありとあらゆる病気の根源となりうるのです。
体内に備わるバリア機能
酸素を取り込む必要のある器官には、 幸いなことにこうした酸化ストレスから身を守るシステムが備わっています。
また、付加的に抗酸化作用のある物質(酵素やビタミン)は、 私たちの体の器官から作られたり、食物から摂取することが可能です。
例えば、ビタミンCは細胞内でフリーラジカルの作用を抑制することができますし、 ビタミンEとカロテノイドも細胞膜で同じような効果を発揮します。
さらに、ビタミンEは動脈内の悪性のコレステロールを除去する働きもあるのです。
これらは野菜や果物に含まれている栄養素なので、 日々のバランスの取れた食生活を続けることで、 抗フリーラジカルを実現することができるのです。
フリーラジカルから肌を守るためには
しかし、体のバリアシステムは加齢とともにその力が弱まります。
- 紫外線を多く浴びる
- 汚染された大気の中で生活をする
- 喫煙の習慣がある
といった習慣がある人の体内には、特にフリーラジカルが多く見られ、 体のバリアシステムはより弱くなります。
では、加齢や日々の習慣により弱くなっていくバリアシステム以外で、 どのようにしてフリーラジカルから身を守っていけば良いのでしょうか。
肌レベルでいうと、 フリーラジカルは、細胞膜に集まりコラーゲンを破壊することで「シワ」をつくります。
このフリーラジカルによるコラーゲンの破壊を防ぐために、 抗フリーラジカル成分の配合された美容クリームが製造されています。
結果的に、わずかな量の酸化物質が肌のバリアを通り抜けるだけとなり、 予防学的に、こういったクリームを日々使用することによって肌が保護されるのです。
フリーラジカルの矛盾
抗フリーラジカルの物質は、現在その多くが海藻類などから生成されています。
しかしながら、自然界において完全なものなど存在しません。
なぜなら、私たちの体自身が体の免疫機能として、 フリーラジカルを生成する機能を持っているからです。
それらは「マクロファージ」や「ニュートロフィル」といった、 白血球の働きにより生成されたもので、 外部から侵入した「 体に害を及ぼす恐れのあるバクテリアや微生物」と戦うために作られているのです。
ですので、人体はフリーラジカルにより身を守られながら、 同時に攻撃をされているという事になります。
まとめ
この自然界における矛盾を理解した上で、 完全にフリーラジカルを取り除くという意識ではなく、 必要以上のフリーラジカルによる攻撃を防いでいくという事が、 肌や人体を健康的に保つ秘訣になるのではないでしょうか。